大崎事件の他にもえん罪があった?なぜ若い先生が生徒殺しで逮捕されたの?

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2017年に鹿児島の大崎事件が再審開始となりました。再審後は100%無罪となりますから、殺人の罪で刑務所に10年いた女性の無実が証明されたことになります。

このような冤罪事件はたくさんありますが、兵庫県西宮市で起きた甲山(かぶとやま)事件ほど有名なものは少ないでしょう。殺人の罪で逮捕された22歳の女性が最終的に無罪となるまで25年もかかった史上まれにみる事件です。

今回は、この甲山事件の内容についてわかりやすくまとめてみます。


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甲山事件とは

この事件は1974年に、障害のある子どもが親元を離れて暮らす施設「甲山学園」で起きた「園児の転落死事件」です。

「転落死事件」と確定するまで25年かかったわけで、事件発生から25年間は「殺人事件」だったのです。

殺人の容疑者だったのは、学園の保育士であったYさん(女性・当時22歳)です。20歳で四国の短大を卒業し、就職したのが甲山学園でした。

亡くなったのは学園に入所して暮らしていた知的障害のある子ども二人です。二人とも12歳でした。死因は浄化槽へ転落したことによって溺れたというものです。


溺死の場所はどこ

浄化槽とは下水道が通っている地方にはみられないものです。なぜなら下水道だと、トイレの汚水はすぐに処理場へ向かって流れて行くからです。

下水道が無い地域だと、通常は「汲み取り式トイレ(通称ぼっとんトイレ)」になります。しかし1960年代から全国で急激に水洗トイレ化が進んだ結果、下水道のない自治体で普及したのがが「浄化槽」です。

これはトイレからの汚水をトイレ近くのタンクにためて、沈殿物と水分に分け、水分を微生物に分解させて濁りや匂いを除去してから川に流すというものです。

そして沈殿物は一年に一度程度、汲み取り業者がバキュームカーで吸い取り、合わせてタンク内の洗浄も行うのです。

下水道が普及するまえのピーク時には、日本列島に約1000万台の浄化槽タンクが設置されていたようです。

タンクは家族の人数によって5人用とか7人用または、この甲山学園のように100人用といった種類があります。つまり1000万台×5としても5000万人。つまり人口の半分くらいが浄化槽水洗トイレと使っていた時代もあったということです。

2017年の今は全国的に下水道が普及してきましたので、かなり少なくなっています

1974年時点での西宮市の下水道普及率はかなり高かったようですが、現場はかなり山奥なので下水道は届いていませんでした


なぜ浄化槽に転落したのか

この事件は、入所して暮らしていた子どもが浄化槽に落ちて溺れたというものです。どうしてそんなタンクの中に落ちるのでしょうか。

それは、年に一回程度行われる沈殿物の汲み取りのために地上に大きな穴が開いているからです。そこには当然フタがしてありました。いわゆるマンホール(のフタ)というやつです。

道路にあるような下水のマンホールは40キロあり、もちあげやすいパーツもついていませんから普通の人が道具もなしに持ち上げることはできません。

ところが、甲山学園の設置されていたタンクの蓋は17キロ~18キロしか無かったのです。12歳の子どもなら動かせてしまう重量です。

実際にタンクの底からは、石ころや爪切りなど日常的に子どもたちが蓋をずらして投げ込んでいたと考えられる物がたくさんみつかっているのです。


なぜ事故の可能性を否定したのか

大崎事件も、泥酔した男性が牛のふんをためていた穴に落ちて沈み、溺死したという事故死です。

参考→大崎事件ってどこでいつ起きたの?なぜ無実のおばあちゃんが懲役10年?

しかし警察・検察には誰かを逮捕し、起訴し、有罪にしたいという衝動があるのでしょう。ある意味、まじめさゆえの勇み足と言えるかもしれません。

その警察には、マンホールは障害を持った12歳の子どもにとって重すぎて動かせないという決めつけがあったのも冤罪を生んだ原因です。それは「障害児」に対する偏見からきているのだと思われます。

甲山学園は「知的障害」の施設で、身体的には何の障害もありません。しかもこの事件に関係した子どもは中・軽度の知的障害でした。現在なら普通学級にいても不思議ではありません。

しかし1974年という時代の警察官、しかも上司にあたる年代は戦前戦中の生まれでしょう。そんな人たちの頭に刷り込まれた障害者のイメージは、彼らが18キロの蓋を移動させる力や思考力はないだろうといういうものだったのでしょう。

今ならまず、子どもたちが蓋を動かせるかどうかやらせてみるでしょう。当時はそれすらやらせていません。


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なぜYさんを犯人に仕立てたのか

タンクに落ちた二人の子どもが死亡したと推定される時刻の二回とも勤務中だったからです。(その推定時刻もあとで間違いがわかるのですが) そして、甲山学園が住宅地から遠く離れた山地にあることから外部からの侵入がほぼ不可能であるという地理的条件もありました。

つまり、容疑者を特定(決めつけ)しやすい状況にあったということです。これは大崎事件と共通しています。

さらに、容疑者が世間ずれしていない女性であるという点も共通しています。これは、取り調べて追い込めば自白させやすいという読みがあったと考えられます。

武道の経験者が多い警察官が、密室で女性を取り囲んで一日10時間も取り調べるのです。夜はまだ寒い4月の留置場です。

弁護士を呼んで外界とのパイプを確保するなり不当逮捕だと訴えて釈放させるなどという手段もあったはずですが、彼女にはそんな知識はありませんでした。おそらく今でも多くの人はそういう知識を持っていないでしょう。

アメリカだと必ず逮捕の時にあなたには弁護士を呼ぶ権利がある」と警察官が言う義務がありますが日本にはありません。

おそらく事故死の可能性も浮かんでいたとは思いますが、若い女性を何日もいじめて自白させてやろうという気持ちがあった可能性もあります。追い詰めて嘘の自白をさせることは簡単です。経験上断言できます。その経験はこの記事の途中にあります→大崎事件


そして自白

開けたり閉めたりしたなら付着するはずの指紋もマンホールにはなく、突き落としたのならかかるはずの汚水の反応も見られないなど証拠の無いまま取り調べがすすみます。そして、甲山学園内の部屋を警察が勝手に「取り調べ室」として、入所している子どもたちや職員を次々と呼びだして尋問を始めました。

そして、11歳の子どもから「Y先生が、亡くなった子をマンホールの方へ連れて行くのを見た」という証言を得るのです。これは結局裁判の最終局面では信頼できる証言として採用されませんでした。

知的障害のある子に、何時何分ごろ誰が何をしていたか思い出せというのは非常に困難です。私でも昨日の午後7時13分ごろ何をしたかと言われたら困ります。しかし、当初の逮捕ではこの証言が有効とされたのです。

Yさんは取り調べ10日後に、「自分がやったかも知れません」と自白します。孤独で異常な状況の中「同僚はおまえがやったと言っているぞ。」という嘘で追い詰めた結果、混乱し精神状態が異常になり自暴自棄になったのです。

さらに「嘘発見器が嘘と言っている」とか、「子どもが目撃している」とか、「お前に服に死んだ子の服の繊維がついていた」などと問い詰めます。そしてその自白をした夜に留置場でYさんはストッキングを使って自殺未遂を図ります。


不起訴しかし長期裁判へ

そこまで追い込んだ取り調べでしたが、さすがに検察も有罪にできないと判断したようで結局釈放されました。Yさんの自白も矛盾が多いので採用されませんでした。当然、Yさんは人権を侵害された賠償を国と兵庫県警に求めて裁判を起こしました。

国家賠償を求めた裁判は当然Yさんの勝利に向けて進んでいきました。しかしその裁判も最終局面を迎える頃、それに応戦するかのように、検察は殺人容疑でYさんを再逮捕するのです。

そして裁判でアリバイを証言していた園長や同僚を偽証罪で訴えました。そして長期の裁判が始まるのです。再逮捕の理由は「何人かの子どもがYさんと亡くなった子が犯行時間に一緒にいたのを見た」という「新たな証言を得たから」というものです。

事件から3年も経っていました。子どもの証言を3年も集めるという不自然さを使ってまでしておこなった逮捕の裏側には、国家賠償の裁判をとり下げさせたいという一念があったのでしょう。


まとめ

そしてその約20年後、やはりYさんの無罪が確定するのです。偽証罪も無罪となりました。この間の裁判では一度も有罪判決は出ませんでした。しかし22歳から48歳までずっとYさんは殺人の容疑者だったのです。

そして園長と同僚は「嘘つき」の容疑者だったのです。なんと罪深い冤罪でしょう。

Yさんは裁判中に結婚し、子育てもしていました。人権活動の盛んな関西では、そんな彼女を何千人という多くの支援者で彼女とその家族を支えました。

大崎事件もそうですが、冤罪を起こす加害者も人間。被害者を支えて無実を晴らすのも人間です。現代は「疑われるということは何かあるのではないか。」と変な勘繰りをしがちな社会です。そうではなくて、被害者を多くの人が支える社会でありたいものです。

こちらも是非お読みください!→部落差別が生んだえん罪「狭山事件」


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  • 2017 07.02
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