臍帯血の移植費用はいくら?なぜ無料で寄付した血液が高価格になるの?

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2017年8月に、臍帯血(さいたいけつ)を無届けで移植した医師が逮捕されたと報道されました。さらに臍帯血を医師に販売した会社社長も逮捕されています。

この事件で使用された臍帯血とはどんなものなのでしょうか。なぜそんなに高価なのでしょうか。そして今回の逮捕理由である「再生医療安全確保法」とはどんな法律なのでしょう。

今回はそれらをまとめてみます。


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臍帯とは

赤ちゃんが生まれた瞬間は、母体と臍(へそ)の緒(お)といわれるヒモみたいなものでつながっています。そのヒモを臍帯(さいたい)というのです。私は娘が生まれた時に(おそらく父親としての覚悟を促すために)産科の医師がそれを切らせてくれました。

人生が転換した瞬間でしたね。なにせ「これって金属?」っていうくらい固いヒモなんです。手術用手袋に慣れていなかったということもあったとは思いますが、腹筋や大胸筋まで使うレベルの切断でした。

そして医師のもくろみどおり、その美しく白い臍帯を切断した瞬間に感動の涙を流しつつ「これからは自分のやりたいことを捨てて仕事と家事育児に生きる」と決意したのです。

まあそんな修業生活も30年を経過し、一番下の子が今年大学を卒業して就職も決まりそうなのでゴールテープが見えてきました。過去を振り返ると必死で手術用ハサミを使った瞬間が昨日のように蘇ります。


臍帯血とは

その臍帯は長さが50センチから60センチあります。始点は子宮内の胎盤で終点は赤ちゃんのヘソ(臍)です。私が切らせてもらったのは、娘のヘソから約10センチの場所です。ヘソからカットポイントまでの間をクリップで止めて作業終了でした。

やがて新生児とくっついていた約10センチの臍帯は自然に脱落します。自分で呼吸と食事(母乳)をするようになるので母親から栄養と酸素をもらっていたチューブである臍帯は不要となるわけです。

ちなみに日本は、その脱落した臍帯を高給な小箱に入れて保管する風習があります。初めて自分のそれを見た時はちょっと違和感がありました。乾燥しているのでスルメみたいでしたし、いってみればミイラの一部ですからなにか怖い感じもしました。

さて、その切断ポイントから胎盤の始点までには50から100ccの血液があります。それが臍帯血です。臍帯内の血管から血液を採取する時間は数分です。出産後、胎盤の排出までの間にその血を取ることは十分に可能です。

 


臍帯血の成分と歴史

この血が持つ独特の成分として「造血幹細胞」があります。「造血」つまり血をつくる、「幹細胞」木の幹(みき)みたいにどんどん枝をのばす、つまり新しい細胞をつくる元になる、という細胞です。

1980年頃まで、造血幹細胞は骨の中にあるスポンジ状の骨髄(こつずい)にしか無いと考えられていました。しかし80年代に発見されて88年には世界初の臍帯血移植(輸血)が行われます。90年代には各国で臍帯血バンク(血の冷凍保存)が始まりました。

日本でも1998年から健康保険で輸血ができるようになったのです。つまりまだ始まって20年ほどの新しい医療です。それまでは骨髄移植しかなかった治療分野に新しい、しかも採取が簡単な細胞が加わったわけです。


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どんな病気に有効か

最初に移植されたのは、ファンコーニ貧血という深刻な血液の遺伝病患者でした。ファンコーニ貧血というのは、赤血球や血小板といった成分が十分に作られない病気です。ですから非常に病弱な人生を歩むことになります。

そこに臍帯血を移植すれば、必要な血液成分を作るようになるので病気が改善するわけです。といったように血液の病気に対して効果を発揮します。一番深刻なものは血液のガンである白血病でしょう。他にも悪性リンパ腫や骨髄腫にも効果があります。

これまで、それらの病気の治療には骨髄移植しか道がありませんでした。しかし骨髄移植は、提供するドナーが少ないので、なかなか適応する骨髄が現れません。なぜ少ないかというと、骨髄を採るのに短期間の入院と体への負担があるからです。

しかし、臍帯血の採取は出産のプロセスに無理なく入れる(というか知らない間に採血を終える)ことができるので多くのドナーを得ることができます。問題は、骨髄ほどは幹細胞の数が無いことと、造血を始めるまで時間がかかることです。やはり骨髄に比べると「弱い」のです。

 


売る値段

臍帯血移植はIPS細胞同様「再生医療」つまり、細胞を作り出す細胞を移植するという革命的な医療です。白血病の治療を劇的に変える可能性があります。そんな奇跡の血の原価はおいくらでしょうか。

実は無料です。

献血と同じですね。外国では貧しい人が自分の血液を売って生活しているところもあります。日本でも1960年代まで血液を買う民間会社がたくさんありました。それが法律で禁止されたので、現在は日本赤十字のみが採血していて、献血してもらえるのはジュースだけです。

臓器移植もそうですが、日本ではそれらでお金を得られるようにはしない方針があります。血や臓器を売ることを目的とするブラックマーケットができてしまうからです。


買う値段

今回の事件では、300万円から500万円となっていました。白血病や骨髄腫は死の病ですから、出しますよねそれくらいは。保存はマイナス約200度の液体窒素を使用するのである程度の費用は必要でしょう。しかし足下を見た法外な価格です。

逮捕された業者はそれを医師に100万円ほどで売っていたそうです。医師は200万円から400万円の利益があるわけです。まあそれで白血病が治ったのなら安いものかも知れませんが、ちょっと利益率が大きすぎるような気がします。

まあ問題は、再生医療安全性確保法に違反したということですね。この法律は最近できたもので、臍帯血やIPS細胞を使う際には国の許可をもらってくださいというものです。国は本当に安全な医療機関かどうかを調査してからOKを出すわけです。

今回は、国からそのOKをもらわないまま臍帯血を輸血(移植)したので法律違反で逮捕されたわけです。この法律で逮捕されたのは今回が初めてのようですから、実は全国的に行われている「臍帯血の無許可医療」に対する「みせしめ」逮捕なのかも知れません。

 


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事件の裏にあるもの

私は今回のニュースによって初めて臍帯血に造血能力があることを知りました。人体は本当に神秘的です。しかし、今回は臍帯血を集めていた民間の会社が倒産し、その在庫を引き継いだ会社が国の許可をもらっていない医者に臍帯血を売ったという胡散臭い事件です。

だいたい、臍帯血を保存しているのは日本赤十字などの公的バンクじゃないのでしょうか。民間で保存しているのは、その赤ちゃんのためです。成長して万が一白血病など血液の病気になった時、自分の臍帯血を使えば適合するという親の意向がある時に、高いお金を払って保存するのです。

それが、倒産するってどういうことでしょうか。うがった見方をすれば、

・会計を操作してわざと破産する。

・臍帯血の所有権を本人と親から離す。

・その在庫を引きついだ会社や組織が臍帯血を売る。

・しかし公的バンクではないので、無許可の「悪い」医者にしか売れない。

という構図が浮き上がります。いわゆるブラックマーケットです。

しかも今回は、福岡の「臍帯血卸売会社」の社長も逮捕されています。会社はすでに閉鎖されたようですが、卸売って変ですよね。つまり「仕入れ」して病院へ「卸す」ってことでしょ。

つまり、善意で寄付された臍帯血を卸売業者に有料で売っている病院があるって事ですよね。そうでないと「仕入れ」はできないじゃないですか。そんな臍帯血を使ったら国の許可が取り消されるおそれがあるので、臍帯血の移植許可をもらっている医師は絶対使わないでしょう。


まとめ

許可をもらっていない医師にしたら1回の移植で300万円以上の利益がでる「金のなる木」みたいな治療です。お金の魅力に負けて手を染める医師も出てくるでしょう。まさか逮捕されるとは思っていなかったでしょうしね。

しかし一番怖いのは、善意の臍帯血を悪徳業者に売っている医師です。もっとうがった見方ならば、母親の知らない間に採血して業者に売っている医師もいる可能性があるということです。

昔から胎盤をブラックマーケットに流している医師がいるという噂はありました。臍帯血はものすごい高価ですからブラックマーケットに流せば帳簿外(つまり非課税)の高い収入があるでしょう。しかも医師が自ら採血すれば証拠も目撃者もありませんから取り締まりは不可能です。

そんなおそれのある現状ですから、いっそのこと全員から採血し、自分のために保存する人からは今まで通り費用をとって、寄付してくれる人は出産費用を免除するとかにした方が良くないですか。そうすれば公的バンクの在庫も豊富になり、救われる人も増えるでしょう。

冷凍窒素での保存ですから、ある程度の価格になるのはしょうかないでしょう。しかし透明なマーケットになれば1回500万円とかにはならないのではないでしょうか。出産費用や保存・輸送費用がペイできるだけくらいの価格に落ちれば、もっと多くの人が移植できるようになるでしょう。

 


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  • 2017 08.28
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